気象通報式
気象通報式とは、「航空関係施設等において観測された気象情報を集約して各ユーザーへ送信される電文」のことで、1 METAR
2 SPCI
3 SCAN
4 従来型METAR AUTO
の4つが特に「航空気象観測報」と言われる電文になります。
「METAR」とは、諸説あるものの「meteorology:気象」「Aviation:航空」「Routine:定時」等の類語による造語とされており、日本語では「定時飛行場実況気象通報式」と言います。 「SPECI」は「Special:特別」の単語等を使用した造語で、日本語では「特別飛行場実況気象通報式」と言います。
「SCAN」は「scan:調べる」の単語等を使用した造語で、日本語では「航空気象観測所実況気象通報式」と言います。
「従来型METAR AUTO」は「METAR」に「Auto:自動」の単語等を使用した造語で、日本語では「従来型自動飛行場実況気象通報式」と言います。
1 METAR/SPECIの内容
「METAR」と「SPECI」では、観測装置により観測された情報に、目視による観測結果を加えて「風」「視程」「天気」「雲」等々の気象情報が通報されます。「METAR」は主に1時間ごと(空港によっては30分ごと)に通報され、
「SPECI」は気象庁の定める基準( 航空気象通報式 付録Ⅳ 特別観測の実施基準 )に該当するとき、例えば「着氷性の降水が開始したとき」などに通報されます。ただし、実施基準は「基準」なだけで、各空港が独自に定める規則によってもSPECIは通報されます。
正直、ユーザー(パイロット)としては、「METAR」も「SPECI」も区別を気にすることはありません。
どっちもまとめて、「METAR」と考えている人が多数だと思います。
上の図は、名古屋空港(小牧基地)で通報された2021年1月5日の朝4時の「METAR」と、その後4時18分の「SPECI」です。
15000ftの雲が「SCT」から「BKN」となり、シーリングが15000ftになっています。
2 SCANの内容
「SCAN」は、島などの小さい飛行場における「簡略化した観測」の通報です。地方公共団体などが観測して、最寄りの気象官署が通報します。
注意する点は一つ。
「天気現象」です。
「METAR」「SPECI」と異なり「特別な天気現象」のみが通報され、
特別な天気現象に該当する現象が2つ以上ある際は、より重大な現象1つだけしか報じられません。
上の図は、八丈島空港で通報された2021年1月5日の朝9時の「SCAN」です。
通報文の頭が「METAR」とか「SPECI」ではなく「地点略号」から開始されているのが「SCAN」の特徴です。
3 従来型METAR AUTOの内容
「従来型METAR AUTO」は、登録が必要な気象庁のサイト「航空気象情報提供システム MetAir」にて確認できる情報です。観測装置が自動観測した結果を10分毎に自動で通報するものであり、人の手が入らないため注意が必要で、特に
VMC/IMCの判断に従来型METAR AUTOを使用するべきではありません。
そのため、ほとんどの民間空港で通報されていますが、民間サイトでは基本配信されていません。
その他、
1 雨雪の特性や周辺現象は示されない
2 霧などの視程障害現象は示されない
3 雲形や対流雲等の情報は示されない
4 雲が識別できないときは「NCD(No Cloud Detected)」と報じられる
などの点に着意が必要です。
上の図は、青森空港で通報された2021年1月5日の朝9時20分の「従来型METAR AUTO」です。
通報文の日時の後に「AUTO」とついています。
また、雲の付加情報位置が「///」となっていたり、
RMK欄にて
1 1mm/h単位の降水強度(RI000)
2 積雪の深さ及び最近1時間での積雪量(SD076/000)
が通報されている点などが「SCAN」の特徴です。
3’ 従来型METAR AUTOの「従来型」って何?航空気象観測の完全自動化について
ICAO ANNEX3「国際航空のための気象業務」で自動観測システムによる通報が認められたことを受けて、 近年世界中で航空気象観測の完全自動化が進められています。正式には
「全要素とも自動観測・自動判別結果を用いたMETAR/SPECI報」といいますが、
「METAR AUTO」「自動METAR報」「自動SPECI報」「自動METAR/SPRECI報」などと呼ばるものです。
日本では2016年12月より、
1 関西国際空港
2 福岡空港
3 与論空港
4 与那国区航
にて試行運用が開始され、
2017年3月より本運用が開始されています。
2021年1月現在では、
・ 喜界空港
・ 徳之島空港
・ 南大東空港
・ 北大東空港
・ 奈多ヘリポート
の空港等でも運用が開始されており、その他
新島、神津島、隠岐などでも試行運用がされています。
「従来型METAR AUTO」とは異なり普通の「METAR」や「SPECI」と同様に扱われ、今後は「SCAN」を運用している空港を中心にもっと拡大していくことになると思わる「次世代型」の気象観測通報式です。
上の図は、関西国際空港で通報された2021年1月5日の朝5時30分の「METAR AUTO」と、朝6時00分の「METAR」です。
関西国際空港及び福岡空港は23時00分から翌日5時59分(日本時間)の時間帯のみを完全自動化しているため、この時間で「METAR AUTO」と「METAR」に変えられています。
通報文の日時の後に「AUTO」とついているものが完全自動化した電文で、ついていないものは人間の気象予報官等が観測結果を反映させた情報になります。
次世代型とは言っても、自動観測通報は機器障害による欠測や、まだまだ技術の限界により観測官の目視観測と差異があることにも留意する必要があります。
詳細は気象庁の 航空気象観測の完全自動化 説明ページ にある
「航空気象観測の完全自動化」と「自動 METAR/SPECI 報」について
を参照すると良いです。