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着氷

着氷とは、雪やあられ、その他空気中の水蒸気や過冷却の水滴が衝撃を受けて氷の層を形成する現象です。

航空機表面にできた着氷は濡れ面積を増加させて抗力を増大し、空気流を乱して揚力も減少させます。
失速速度が大きくなり、安定性・操縦性も悪化、エンジン性能も低下させたり、非常に危険です。

特に着氷気象状態での飛行が認められていない航空機では、着氷状態での飛行は絶対に避けなければなりません


着氷の条件

1 降雨・降雪の中、もしくは雲中などの「水滴の中」を飛行している。
2 飛行機に衝突するときの水滴の温度が0度以下である。
 ※ 特に0℃~-10℃の間の水滴温度で一般的にひどい着氷を起こす。
 ※ また0℃~-4℃の雲は、ほとんどが過冷却水滴で構成されていることが多い。


着氷の種類

1 雨氷型
  粗氷型とも言われるが、同じもの。
  英語では「Glaza」とか「Clear Ice」と言われる。
  比較的「大粒」の過冷却水滴に衝突して「ゆっくり」凍結することにより発生する。
  氷に気泡が入りにくく、固くて光沢のある氷となり、航空機の表面に固く付着し、取り除くのは困難となる。
  0℃~-10℃で最も発生し、-25℃以下ではほとんど発生しなくなる。
  積雲系の雲中などで発生しやすい。

2 樹氷型
  英語では「Rime」と言われる。
  比較的「小粒」の過冷却水滴に衝突して「早く」凍結することにより発生する。
  氷に気泡が入りやすく、白色・乳白色の氷となり、もろくて崩れやすい。
  0℃~-40℃でも発生し、-10℃~-20℃で最も発生しやすい。
  層雲系の雲中などで発生しやすい。

3 霜型
  英語では「Frost」と言われる。
  地上で係留している航空機の表面温度が0℃以下となって、冬の早朝に付着していることが多い。
  また、0℃以下の寒冷な気層を長く飛行した後で、湿潤な気層に入った際に発生することもある。

4 混合型
  雨氷型と樹氷型が混在する着氷のこと。
  最も多く発生する着氷。


着氷の捕捉率


  $E=V・\dfrac{r^2}{R}$

 $E$ :水滴捕捉率
 $V$ :航空機の速度
 $r$ :水滴の半径
 $R$ :航空機の曲率半径

気体の速度が概ね400kt程度まで、比例して捕捉率が増大するが、それ以上の速度では機体の圧縮性による熱等により式は成り立たなくなる。


小型機と旅客機

・プロペラ機
 装備の貧弱性や、低高度・低速での飛行が多いことから、着氷の可能性が大きい。

・ジェット機
 優れた除氷装置を装備しており、過冷却水滴の少ない高高度を高速で飛行することが多く、着氷の可能性は比較的小さい。 


着氷の影響

・翼面
 翼型の変形による揚力の減少・抗力の増加 ⇒ 失速

・プロペラ
 プロペラ面の不均衡 ⇒ 推力の低下、異常振動、構造破壊

・ピトー管・静圧孔
 観測孔の閉塞 ⇒ 計器の誤判読

・風防
 視界不良

・インテーク
 吸気流量の制限 ⇒ 推力低下、エンジン損傷

・アンテナ
 通信の途絶、構造破壊

・気化器(キャブレター)
 エンジン停止
 気化器への着氷は、湿度が高いと外気温10℃以下の空域でも発生することがある。


防氷・除氷の方法

・機械式
 ゴム皮覆への圧縮空気の注入

・熱式
 電気的加熱や、暖気の吹きかけによる方法

・液体式
 プロペラブレードへ油の塗布を行い、遠心力で吹き飛ばす方法



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