トランスポンダー・ADS-B
トランスポンダー
トランスポンダーとはTransmitter(送信機)とresponder(応答機)を合わせた言葉。地上のインタロゲータ(質問機)が質問パルスを発射し、航空機に搭載された応答機が自動的に応答パルスを発射して応答する。
空港監視レーダー(ASR)や航空路監視レーダー(ARSR)で使用される単純な電波反射波を利用する1次監視レーダーと区別して、2次監視レーダ (SSR)とも言う。
トランスポンダー・モード
軍用 :MODE - 1 , 2 , 3 , 4 , 5民間用:MODE - A , B , C , D , S
ただし、MODE 3 とMODE A はパルス間隔が同じなため、MODE-3/Aと呼ばれ、軍民両用となっている。
MODE 1 | Friendlyとして識別されるための基本警戒用コード |
---|---|
MODE 2 | 機種・用途等を個別に送信するためのコード |
MODE 3/A | 航空機個々の厳密な識別をするためのコード |
MODE 4 | 高度に秘匿化された味方識別のためのコード。毎日NATOによって数値が設定される。 |
MODE 5 | MODE4を更に発展させた味方識別のためのコード。GPSによる時間補正を行い、航空管制との干渉防止や性能の向上が行われた。 |
MODE B | ヨーロッパにおける航空路管制用コード |
MODE C | 自動高度送信用コード |
MODE D | 将来技術用の予備コード |
MODE S | 個別識別レーダー・ビーコン装置 詳細は下方 |
トランスポンダーコード
1200 高度10,000 ft未満を飛行するVFR機1400 高度10,000 ft以上を飛行するVFR機
7500 ハイジャックを受けた時
7600 通信機故障
7700 緊急事態
2000 コードについての指示を受けていない航空機がIFRでレーダー管制空域外からレーダー管制空域へ入る場合の二次レーダーへの返信用コード
3333 整備用
4444 整備用
5555 整備用
7777 欧米軍用機用コード。スクランブル発進した戦闘機が使用する。
モードS
航空交通の増大に伴い、電波の相互干渉(ガーブル)、建物反射等によるレーダゴースト、同期しない応答の干渉(フルーツ)の発生が問題視され、監視能力の拡大を図り、ATCトランスポンダーの能力を発展させたもの。1 地上のインタロゲータ(質問機)からの全機質問電波が発信される。
2 航空機搭載の MODE-Sトランスポンダーが、固有の個別アドレスと高度情報を発信する。
3 地上に航空機の位置・高度・個別アドレスが分かり、個別アドレス情報がコンピューターにファイルされる。
4 近い航空機から順番に、個別アドレス情報を使用して個々の航空機に個別に質問電波が発信される。
5 自機に受けた質問に対してのみ、航空機のトランスポンダーは応答を行い、データリンクも行われる。
モードAとモードSの比較
項目 | MODE-A,C | MODE-S |
---|---|---|
コード数 | 12bit, 4096コード | 24bit, 16777216コード |
精度 | 方位:0.15度 距離:250m 高度:100ft単位 |
方位:0.06度 距離:100m 高度:25ft単位 |
電波干渉 | 比較的 大 | 比較的 小 |
データリンク | 無し | 有り |
ADS-B
放送型 自動位置情報伝送監視機能(Automatic Dependent Surveillance – Broadcast)航空機が自ら「識別コード、位置、速度、経路意図等」を一括送信するもの。受信の確認はしない。
航空機の航法装置の性能によって高精度かつ高信頼性の監視情報が送信されるが、信頼性や精度が完全に航空機に依存するため、機材不良時の精度の信頼性の確保が問題となる。
また、送受信機器が非常に安価にできるため、なんなら個人でもプログラムを組んで情報を受け取ることができる。
アメリカでは既に2020年1月から全航空機に対して ADS-B OUT の搭載が義務付けられました。
日本でも早く搭載義務を付けるべきだと私は思っていますが、まだまだ2020年12月現在では予定も立っていないようです。
ADS-B OUT , ADS-B IN
ADS-Bには、ADS-B OUT と ADS-B IN の異なるサービスが存在します。ADS-B OUTが基本装備で、ADS-B INがオプションと考えるとよいです。
「ADS-B Out」は、今まで説明していた通り、各航空機が自ら「識別コード、位置、高度、速度などの自身に関する情報」を定期的に送信するものです。
ADS-B Outが提供する情報は、ほとんどの場合レーダーベースの情報よりも正確で、管制官は航空機の位置の把握と分離をよりタイミングよく行うことができるようになります。
「ADS-B IN」は、近くにいる他の航空機からのADS-B-OUTの情報に加え、地上から発信される
TIS-B(Traffic Information Service -Broadcast;放送型トラフィック情報サービス(地上の航空官署が把握した航空交通情報))及び
FIS-B(Flight Information Service -Broadcast;放送型飛行情報サービス(気象情報やフライトプラン、NOTAMなど安全運航に役立つ情報))のデータを受信し、
コックピットに表示する機能のことです。