離着陸
離着陸は操縦の肝です。特に着陸は操縦の要です。
「操縦が上手なパイロット」というのは「着陸が上手なパイロット」のことだとも言われます。
あなたは、100%の完璧な着陸ができますか。
1 通常離陸
離陸滑走開始から浮揚し、上昇体勢を確立するまでの間を「離陸」と言います。離陸時は高度も低くて速度も遅く、保持するエネルギーが小さいことから非常にクリティカルな危険領域です。
航空事故の大半は離着陸時の事故だとも言われます。
通常、離陸は風下から風上へ向かって進みます。
背風離陸は極力避けるべきですが、管制方式基準においては3kt未満では優先滑走路を指示することができ、
また、多くの航空機では背風10ktまでは性能表に記載されていることが多いです。
ちなみに自衛隊では、緊急事態を除いて背風5ktを超えての離着陸は禁止されています。
滑走路上に完全に静止した状態で出力を上げ、滑走を開始する方法を「スタンディングローテーション」、
滑走路上で止まることなく、誘導路からのLine upに続いてそのまま滑走する方法を「ローリングテイクオフ」などと言います。
スタンディングの方が離陸距離は短くなる一方、ローリングの方が滑走路を開放するまでの時間は短くなります。
旅客機などはローリングテイクオフで上がっていることが多いですが、操縦の基本はスタンディングです。
離陸滑走開始から、タイヤが滑走路から離れる点までの距離を「離陸滑走距離」、
離陸滑走開始から、浮揚後50ftとなる地点までの距離を「離陸距離」と言います。
離陸滑走距離が確保できる土地があれば離陸できなくはないものの、途中でエンジンが故障した際に安全に滑走路上で静止できるだけの十分な余裕を持った場所でなければ離陸するのは推奨されません。
2 短距離離陸
前輪式の場合、フラップを離陸での使用が許されている最大角に展開し、ノーズを抑えて十分に加速させ、ローテーションの操作を失速速度ギリギリで行い即浮揚する方法です。障害物の飛越を行わなければならない際などに使用できます。
3 横風離陸
航空機では通常、横風限界として「横風実証値」が定められています。あくまで実証値であり制限値ではないので、離着陸が禁止されている訳ではないものの、推奨されません。
揚力の左右の不均衡により、バンクが入りやすく、
そして方向安定による風見効果で、風の吹いている方向へ機首が振られやすくなります。
機体を水平に保つように「風上エルロン」をとり、まっすぐ走るようにノーズギア&ラダーを当てて離陸します。
4 片発離陸
双発機において、離陸滑走中に片方のエンジンが故障した際の離陸方法です。当然、速度の遅い離陸滑走初期の段階では離陸の中止「アボート」をすべきですが、
滑走路の残距離で安全に静止できない以上になると、片発でも離陸してしまって直ぐに着陸し直す方が安全な場合もあります。
片方のエンジンのみで推力を作るため、機体の左右の不均衡がおき、抗力も増大して姿勢維持が難しくなります。
また、「飛行性に最も不利な影響を与えるようなエンジン」のことを「臨界発動機」と言います。
単純に左右に1基ずつ2基の同回転をするエンジンが装備されていれば、
操縦席から機軸正面を見て「時計回り」のエンジンの時、「右側」のエンジン
操縦席から機軸正面を見て「反時計回り」のエンジンの時、「左側」のエンジンが、臨界発動機になります。
臨界発動機は、航空機軸から推力軸までの距離の違いによる「推力の左右不均衡(Pファクター等)」の影響で決定されることが多いですが、 左右反転エンジンや回転運動を用いないパルスジェットエンジンなどでは左右差なく、両端のエンジンが臨界発動機となることも考えられます。
5 通常着陸
着陸進入開始から接地し、安全に静止できる速度まで減速するまでの間を「着陸」と言います。着陸時も離陸時同様、高度も低くて速度も遅く、保持するエネルギーが小さいことから非常にクリティカルな危険領域です。
航空事故の大半は離着陸時の事故だとも言われます。
通常、着陸も風下から風上へ向かって進みます。
背風離陸は極力避けるべきですが、管制方式基準においては3kt未満では優先滑走路を指示することができ、
また、多くの航空機では背風10ktまでは性能表に記載されていることが多いです。
ちなみに自衛隊では、緊急事態を除いて背風5ktを超えての離着陸は禁止されています。
ベースレグ(滑走路延長線約1マイル付近へ垂直方向に進入する経路)へ進入し、最終進入「ファイナルレグ」へ旋回する方法が一般的ですが、
滑走路延長線上に遠方からそのままアラインする方法を「直線進入着陸(ストレートインランディング)」と言います。
接地前50ftとなる地点から、完全に静止できる地点までの距離を「着陸距離」、
タイヤが接地し多地点から、完全に静止できる地点までの距離を「着陸滑走距離」と言います。
着陸滑走距離が確保できる土地があれば着陸できなくはないものの、不意の事態に備え安全に滑走路上で静止できるだけの十分な余裕を持った場所でなければ着陸するのは非常に危険です。
6 360着陸
滑走路直上を飛行してショートダウンウインドへピッチアウトすることで着陸を行うため、不整地などでも接地する場所の状態を目視で確認でき、ダウンウインドの幅も通常通り飛行できます。自衛隊機等の高速で飛行する小型ジェット機等は、自衛隊内における規則によって速度制限等が定められており、航空法の速度制限を受けません。
360着陸ではピッチアウトで急激な減速もできるため、飛行場上空まで高速で飛行して進入することで到達も速くすることができます。
7 180着陸(スポット着陸)
単発機のエンジン故障状態を想定した着陸訓練のため等に行われる方法です。通常のダウンウインドよりも滑走路に近く、また通常のダウンウインドよりも高度を高く飛行し、接地点真横でエンジンを無推力の状態にして進入します。
8 片発着陸
双発機において、飛行中に片方のエンジンが故障した際の着陸方法です。片発離陸同様、片方のエンジンのみで推力を作るため、機体の左右の不均衡がおき、抗力も増大して姿勢維持が難しくなります。
9 ノーフラップ着陸
電気故障や機械的故障によりフラップが展開できない状態や、それだけでなく強風下での着陸時などに行います。通常の着陸より速度が速く、フローティングしやすくなるため引き起こしの量に注意が必要です。
全く関係ないですが「速度が速い」って「アメリカに渡米」とか「頭痛が痛い」感じがしてちょっと落ち着かない響きに感じますね。
多分間違いではないと思うのですが...
10 不整地着陸
不整地着陸は、未舗装の草地などで行う着陸です。アラスカのブッシュパイロット等は不整地離着陸かつ短距離着陸がデフォのようなものです。
11 予防着陸
予防着陸は緊急事態寸前における着陸で、緊急事態になるかもしれないから、その前に安全に着陸しようとするものです。緊急事態を宣言するほどではないが、不具合が発生したので飛行場に着陸したり、ヘリコプターが校庭に着陸したりするのも予防着陸の一種です。
例えばVFR機が不意の天候悪化に遭遇して機位も分からなくなった時など、たまたま直下に見つけた海岸線に不時着を行う、等も「エンジン推力を残した状態における不整地への予防着陸」などと言います。
12 緊急着陸
緊急着陸は緊急事態における着陸です。緊急事態を宣言し、管制から優先権を与えられて行う着陸で、飛行場には消防車や救急車なども万一に備えて緊急配備されます。
エンジン故障や燃料欠乏等々、致命的な緊急事態において行われます。
13 強行着陸
強行着陸は管制官等の指示に従わず無理に着陸することです。1976年にソ連空軍のベレンコ中尉が日本にMig-25で亡命してきて、函館空港へ強行着陸した歴史などもあります。