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対領空侵犯措置

1 領空

「領空」とは、国家固有の「領土・領水の上空」のことです。

日本においては、「領海及び接続水域に関する法律」により領海の範囲は通常「基線から12nm」となっています。
そう、たった12海里です。
ジェット機なら2分程度、小型のプロペラ機でも5分もあれば陸地に到達します。
領空侵犯なんていうと、目のいい人はハッキリとその航空機を目視できてしまうほど近くです。

さらに、国際航行に使用されるいわゆる「国際海峡」の
 1 宗谷海峡
 2 津軽海峡
 3 対馬海峡西水道
 4 対馬海峡東水道
 5 大隅海峡
の五海峡は「特定海域」として、領海は更に短縮されています。



これらの海峡では、その狭い範囲を飛行しても領空ではないので国際法上問題ないことになっています。
実際、中国機やロシア機が対馬海峡やら宗谷海峡やらも時折飛行しています。

また、琵琶湖とか利根川など、湖や河川は領土でも領海でもありませんが、「領海及び接続水域に関する法律」で定められている「内水」というものに分類され、領土領海と同様にその上空は領空になります。
ちなみに、瀬戸内海も領海ではなく、内水に分類されます。


2 水域

1 接続水域
 接続水域とは、基線から24nmの線の内側です。
 接続水域内では通関や出入国管理など公務員の職務執行が可能です。

2 排他的経済水域
 排他的経済水域とは、領海の基線からその200nmの線までの海域で、天然資源等の「主権的権利」、海洋調査等の「管轄権」などが認められる水域です。

3 公海
 公海は、どの国の排他的経済水域、領海、内水、群島国の群島水域にも含まれない海洋のすべての部分です。
 公海はすべての国に開放され、航行の自由、上空飛行の自由、漁獲の自由、海洋の科学的調査の自由等が認められています。

3 船舶の無害通航権


船舶については、「海洋法に関する国際連合条約」により、
沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、領海を通航することが認められています。
例えば「潜水艦は浮上して旗を揚げる」だとか、「漁獲活動」や「調査・測量活動」などの制限を条件にして、その制約を守っている限り他国の領海内を割と自由に通航できます。

一方で「空」については、
国家が領空に対して「完全かつ排他的な主権」を有しており、
外国航空機が他国領空を飛行する場合は「必ず」領域国の許可を得る必要があります。

特段の事情がないにもかかわらず許可を得ずに領空に侵入することは「領空侵犯」と呼ばれる国際法上違法行為になります。
空には無害通航権はありません。

4 対領空侵犯措置

日本においては、防衛省航空自衛隊が周辺空域をレーダーによって「監視」「識別」しており、
領空侵犯のおそれのある航空機などを「発見」した場合には、
待機させている戦闘機を緊急発進(スクランブル)し、対象となる航空機の行動を目視で監視します。

必要に応じ、領空に侵入しないように「通告」を行い、
仮に領空侵犯があった際には、領空から退去するように「警告」、
または最寄りの飛行場に「強制着陸」させます。

この一連の任務が対領空侵犯措置です。

緊急発進回数は高い水準で推移し、冷戦後最も少なかった平成16(2004)年度(141回)と比べて、令和元(2019)年度では約7倍(947回)に増加しています。




5 領空侵犯の事例

1 ベレンコ中尉亡命事件
日時 1976年9月6日
場所 北海道茂津田岬の沖合上空~函館空港までの間
機体 MIG-25×1
ソ連空軍のパイロットであったベレンコ中尉が、亡命を求めて函館空港に強行着陸を行った事件。
日本の防空網の穴を露呈した形となり、この事件を機に現在E-2DやAWACSが空中警戒任務に就いています。


2 対ソ連軍領空侵犯機警告射撃事件
日時 1987年12月9日
場所 沖縄本島上空及び徳之島・沖永良部島間の領海上空
機体 TU-16×1
ソ連機が沖縄本島上空の領空へ侵入。米軍・空自基地上空を通過。
その17分後、同じ機体が沖永良部島・徳之島上空の領空へ侵入。
航空自衛隊のF-4EJが初めて警告射撃を行った事件。


3 東京急行
ソ連~ロシア空軍の戦略爆撃機、哨戒機、偵察機、電子戦機等が日本の周辺を飛行し、哨戒・偵察を行なうことを俗称で「東京急行」と呼ぶことがあります。
東京に近づく飛行経路からこのように呼ばれ、TU-95やTU―142などが飛行することが多い。
航空自衛隊によるスクランブル発進の代表的な事例。



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