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様々な報告

操縦士は様々な責任を有します。
責任に基づいて、時には様々な報告をする必要があります。
ここではどのような報告の種類があるのか一部を示します。


1 航空事故報告書


参考:AIP ENR1.14-2

航空法76条、施行規則165条に基づいて「事故」の報告書を提出します。
ここでいう「事故」は、ざっくりまとめると
 1 墜落・衝突・火災
 2 航空機による人の死傷・物件の破壊
 3 機内での死亡・行方不明
 4 他機との空中衝突
 5 「大修理」を必要とする航空機の損傷
のことを言います。


2 重大インシデント報告書


参考:AIP ENR1.14-3

航空法76条の2、施行規則166条の5に基づいて「重大インシデント」の報告書を提出します。
重大インシデントとは「事故のおそれがある事態」のことをいいます。
他の航空機が使用中の滑走路に着陸を試みたり、滑走中に滑走路を逸脱したり、墜落直前に対地警報装置の作動から慌てて機首上げしてなんとか墜落を免れただとか、「大修理」までならなかったもののそうなる恐れがあっただとか、
一歩間違えれば大きな被害を出しかねない準事故とでもいうべきもので様々な内容が含まれます。


3 異常接近報告書


参考:AIP ENR1.14-4

航空法76条の2、施行規則166条の5に基づいて「異常接近」の報告書を提出します。
英語では「ニアミス」とか「Near Mid Air Collision」「Confliction」とも言います。
異常接近の基準は明確に定められておらず、その状態が異常接近だったか否かというのは機長の主観によって判断され、人それぞれ差異があります。
当然、こちらが「異常接近ではない」と考えていても、相手が「これは異常接近だ」と考えると「異常接近」の報告が上がることになったりします。
機長の経験や能力、個別の状況によって異常接近であったり異常接近でなかったりするので判断は難しく、報告はパイロットのモラルに基づいているといっても過言ではないと思います。


4 目撃事故報告

航空法76条2項に基づいて「他の航空機の航空事故を目撃したこと」を管制に無線で報告し、施行規則166条に基づいて報告を行います。
船員法では14条で「・・・最寄りの船舶はこれを救助しなければならない・・・・」などの規定もありますが、航空機では当然他の航空機の救助なんてできません。
墜落や火災を目撃しても、無線で報告し、着陸後にその参考となる事項等を報告します。
漫画「天神」では「他の航空機を自分の航空機で支える」なんて芸当をやってのけていましたが、現実では99.9999999…%無理だと思われます。
映画「バリー・シール」で「寝こけていたパイロットを起こすために自機の翼で他機の翼を小突く」なんてやっていましたが、それくらいなら法律的にはダメでしょうが技術的にはできないこともないかもしれませんね。


5 異常事態報告

航空法76条3項に基づいて「異常事態」を管制に無線で報告します。
ここでいう「異常事態」は、ざっくりまとめると
 1 空港や航空保安施設の機能障害
 2 異常気象・地象・水象
 3 その他、航空機の航行の安全に障害となる事態 
です。
東日本の震災の時には津波の接近する状況を伝えたりしたともいわれています。


6 鳥衝突報告


参考:AIC 030/19

「AIC 030/19 航空機への鳥衝突等が発生した場合の報告について」に基づいて「国土交通省航空局安全部安全企画課空港安全室」へ報告書を提出します。
鳥衝突情報共有サイト 上で過去事例の確認や統計情報の確認、報告自体もこのサイトで行うことが可能です。
報告された情報は、航空局によってICAOが管理するデータベース(IBIS)に登録されます。(ICAO Doc 9332 "Manual on the Bird strike Information Manual")


7 後方乱気流遭遇報告


参考:AIP AD1.1-15

「AIP AD1.1-15 6.3.5 後方乱気流遭遇報告」に基づいて「国土交通省航空局交通管制部管制課 空域調整整備室」へ報告書を提出します。
JASMA ウェブサイト 上で報告書の様式を入手でき、航空機の機長は、後方乱気流に遭遇したと思われる場合に、報告書を作成して提出します。
後方乱気流グループによる後方乱気流管制間隔が適用される空域(東京進入管制区・成田管制圏・東京管制圏)において安全性評価を行うために後方乱気流遭遇報告を収集しており、報告された情報は安全性評価の目的にのみ用いられます。


8 ドローンに関する報告

「平成27年12月9日 国空航第862号 運航中の航空機に無人航空機が接近・衝突等した場合の当局への報告について」に基づいて、
「国土交通省航空局安全部安全運航課、地方航空局保安部運用課または空港事務所等」へ報告を行います。
近年特にドローン技術が発展して一般化するにつれ、ドローンと航空機の異常接近やドローンの行方不明なども多くなっており、報告を集めることで自体の把握を行い、安全性の向上につなげています。


9 航空安全情報自発報告制度


参考:航空安全情報自発報告制度 (VOICES) ウェブサイト

「AIC 034/14 航空安全情報自発報告制度 (VOICES) について」に基づいて、
「国土交通省航空局が設置する、第三者機関」に報告します。
航空安全プログラム (SSP : State Safety Program)の一環として行われており、操縦者だけではなく整備士や客室乗務員、運航管理者や空港運営者などもそれぞれ報告を行います。
このVOICESは義務報告ではなく、特定の個人名や会社名、機番などが特定されないように匿名化して、純粋に安全情報の共有を目的としたものです。
航空安全情報自発報告制度 (VOICES) ウェブサイト 上で過去の報告や統計情報の確認、報告自体もこのサイトで行うことが可能です。
いろんな立場の人のハンガートーク集のようなもので、読み物としても面白いです。


10 航空機材不具合報告

ASIMS 上で確認できる「サーキュラー6-001 航空機に係る不具合の報告・通報について」に基づいて、
最大離陸重量が 5,700kg を超える飛行機又は最大離陸重量が 3,175kg を超える回転翼航空機を運航する者は、航空機の不具合事項を報告します。
操縦士ではなく航空機運航者の義務報告ですが、運航に関する報告のはじまりは当該機長が主となることが殆どだと思います。


11 安全上の支障を及ぼす事態の報告書

航空法111条の4に基づいて、「安全上の支障を及ぼす事態」について報告書を提出します。
ASIMS 上で確認できる「サーキュラー6-011 航空法第111 条の4 に基づく安全上の支障を及ぼす事態の報告について」に細かく報告を要する内容が説明されており、
事故や重大インシデントに始まり、想定される不具合の大半が報告対象となっています。
この報告も操縦士ではなく航空機運航者の義務報告ですが、運航に関する報告のはじまりは当該機長が主となることが殆どだと思います。



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